あのこがそれを
だいじといわなくても
ぼくたちはたのしい
夢中
そこになまえなんかない
ボールに見えたのは
もしかしたら
在りし日の時間
記憶
細い二本の線路の上で
今日も行き先を迷う
ぼくは電車じゃないから
平均台の上を歩くみたいに
路肩のブロックの上を歩くみたいに
ソフト帽の似合うおとななのに
おっとっと、と
そろそろ進む
名札がないと不安というなら
それを真珠と名づけましょう
それはいつも
どの航海のなかにいても
もぐってくぐって
かきわけて
生きているぼくの存在自体が生き証人
あの滴るような月にも負けないほど
深い陰りも持った玉になった
なきごとも知っている
虹の橋の心地よさも知っている
甘い綿菓子の時間も知っている
心地のよい
わたがしの時間
3時は過ぎて
夕べの匂い
ぐつぐつ
暮れ六つ時に広がります
やがて貝のベッドで眠る時間
ねむりはお肌を磨きます
ねむりは今日の日を
適切な場所に誘います
朝が来ます
誰かに撫でられる心地よさ
まぶたの裏にそっと置き
真珠はきりりと自ら光る
誰になぐさめられなくとも
誰になだめられなくとも
誰かの手を借りて
磨かれなくとも
真珠は自らの輝きを放つ
きりりと前を向いて
うつむく日があっても
進行方向はかわらず。
在るから
輝く
心配ご無用。