いろいろな人にたすけられた小瓶
今日の昼過ぎに事件が起きた。
目に入れても痛くない大切な人が、感情を抑えられなくなる病気の男性客に平手打ちされるのを見た。
・・・脳の病気・・・。
頭では理解できるし、理解しようと努力はしていた。
が。
2発目が行きそうだと感じた私はダッシュし、興奮しているお客の背後を取って後ろから押さえ、両手だけはしっかりと抑えた。
すぐに横倒しにし、後ろで手を組ませて拘束する衝動は理性で抑えたので行動には移さなかった。
・・・病気からくる怒りと興奮・・・。
一旦は謝るが、すぐに大声を出して私に威嚇をし、抑えた手を振り払おうとする。
私は握力もあるし、“気”を入れて握っているので、力負けすることはない。
・・・病気と年齢からくるの後遺症・・・。
はたから見ると全くそんな風に見えないだろが、冷静を失わないための自分の理性に繋がる医療的な言葉を思い出しながら、激情が交互に顔を出していた。
イテテテ!と大声を出して演技をし、再び威嚇の言葉を発する。
だんだんと、医療的な言葉が濁りはじめ、「こいつはチンピラとかわりないな・・・。」と真っ赤な炎が出始めた時、いつもフォローしてくれる友人と、言われたことしかできない部署のトップの二人が駆け付けた。たぶんフォローしてくれる人が号令をかけてくれたんだろう。
傍にくると、お客をなだめて「別室に行こう」と、私ではなく興奮したお客に話した。
手を放すと攻撃されるに決まっているので、手を放さなかった。
何度か言っているのを聞いて、「あぁー、私に手を放すように間接的に言っているのだな。」とわかり手を放した瞬間、興奮した客が殴りかかろうと振りかぶった。
私が殴られるのは別に構わないので、目を合わせてそのままでいると、興奮した男性客は挙げた手を降ろし、すこし悪態をつきながら別室に移動していった。
人にはやる気スイッチがあるらしい(笑)。
たぶん、殴りかかられた途端、私のやる気スイッチがオンになる可能性が高かった。
数年前、一人で留守番した時、駄々をこねて興奮した客が私に殴ったことがあった。
その時も目は反らさず、しっかりと体勢を整えていたので、拳が顎で止まってしまい、お客は驚いていた。
北斗の拳のラオウのように(笑)、殴った相手に「なんだそんだけか?」と話すと、興奮した客は大人しくなり自席に戻りうつ伏した。
その後は反撃されるようすがなかったので、その人の送迎者が到着するまで淡々と掃除などの仕事をして見送った。
(後で思い返した時に、私はいい歳してまだ厨二病を患っているのかもしれない・・・と残念に思ったが。)
自分が殴られるのは我慢できるが、大切な人・・・とくに今大事にしている人が襲われていたら理性を抑えるのが難しい。
オンになっていたら考えるよりスムーズに手が早く出る可能性があった。
しかし、結論から言うと誰も傷つけることなくうまく収まった。
駆けつけてくれた友達は、気が利くし頭が良く空気が読める人だ。
月の君を可愛がっていることは知っているので、私の理性が抑えられないだろうと思って駆けつけてくれた気がする。
真相はわからないが、車で帰る途中・・・すごくありがたいなー・・・と思った。
しかし、私は目から得た情報は長く記憶に残るので、行き場のない怒りに困っていた。
バッティングセンターでかっ飛ばしていこうかと思ったが、身体の体調は感情に影響するといつも考えているので治療に行くことにした。
いつも治療してもらっている東洋医学の全盲の先生ところに行った。
「話を聴いてるかぎり、怒りが関係しているかと思ったけど、身体は怒っていないね?怒りを取る治療をしたけど、それでは効かないから別の方法をするよ。」と先生は言って治療方針を変えた。
治療中は、気持ちいい温度のお湯に浸かっているように体の筋肉がほぐれた。
先生に、「今日は助けてくれた人がいたから、私もスイッチが入らず助かりました。本当にありがたいです。学生時代は猫をかぶって過ごしていましたが、この会社に来たら色々あって猫がトラになりました(笑)。ダメですねぇ。やっぱり今の仕事は合っていないみたいです。」と話すと・・・。
先生は「トラに進化したか!(大笑)。そいつは凄いな!でも今日は、身体を見る限り、しっかりと理性で保って動けていたんじゃないかな?まぁ、普通は自分が殴られた時に怒るものだ。でもあなたは誰かが傷つけられた時に怒った。その人はみんなに手を出して傷つけているから、きっと心の奥底ではあなたはその人のことを嫌いなんだろう。でも病気だからと思って普段は頑張って理性で抑えて仕事をしている。いい風に進化しているんじゃないか? でも、そうやって周りでサポートしてくれる人達はありがたいな。」と話された。
治療院に来るまでに、やっぱり今の仕事は向いていない・・・とかなり落ち込んでいたが、思わず褒めていただけたので嬉しかった。
今日は褒められることなんて一つもしていないけれど、見方を変えた優しい言葉に心が打たれた。
人に言葉をかける時には、こんな風にいつも相手の立場に立って出来ると素晴らしい。
月の君は、殴られた後も痛いなどと騒いでいなかった。普通女の子は殴られたら痛いだろう・・・動揺するし、怒るだろう。
彼女は自分が何か発言することで、ことが大きくなるのを知っている。
今日は仕事をして行き場のない怒りにやりきれなかったが、私を間接的に止めてくれた人や、ことを大きくしない月の君をみると、自分ももっと成長しなくてはいけないなと痛感した。
明日は、止めてくれた人にお礼を言い、月の君には大丈夫だったかさりげなく聴こう。