彼は元気だろうか。唯一の繋がりであるLINEの連絡先を削除してから、もう半年くらい経った。なんだかふと、急に寂しくなったので、書いてみる。
彼は一年下の後輩だった。運動勉強何でも出来る、天性の才能を持ちながらの秀才、と周囲から尊敬されていた。
初めて出会ったのは、中学2年生の時。委員会が同じで。中学生1年生にして博識かつ聡明な姿は勿論素敵だったけれど、時々見せるお茶目な仕草&笑顔のギャップに、強く心を惹かれてしまった。運命の人だと、思った。
まあ、でも、私は不細工だし、運動も勉強も平々凡々な女だった訳。だから、彼に近付いても恥ずかしくないように自分を磨いた。そして会う度に好き好き言い続けたし、プライドの高い性格を見越して褒め称えたし、なんでもかんでも奉仕し続けた。ぶっちゃけストーカーまがいで、今思えば相当気持ち悪い。
彼はとてもずる賢い人で、私の好意を知っていながら、上手く掌で転がす為に全てをかわし流していた。それはきっと、「自分を上げてくれる先輩」という存在を無くすのに惜しかったからだと思う。私は学校でも結構交友関係が広い方にいたから。
途中辛くなった私は、言うのだ。
「好きじゃないなら嫌いって言って。そうしないと諦められない」
彼は笑って、優しい声で言い返す。
「そういうの、嫌いじゃないですから」
飴と鞭の使い方をマスターしていた。調教されていた。いつもはお前なんて興味ない、みたいなフリをする癖に、時々びっくりする程甘いシチュエーションを用意してくるものだから。
そう、一緒に帰った。手も繋いだ。ハグもしたし、間接キスもしたの。
でも私は結局、いつまでも彼の手駒だった。
最終的に5年間?好きだったんだ。卒業した後も連絡取り続けてさ。
今年のバレンタイン、初めてお返しをしてくれたのが、とても嬉しかった。しかもわざわざ家まで来てくれて。「これまで一回も渡せなかったから」なんて言われて、赤面しない女がどこにいましょうか。
でもその時考えた。「このまま彼の重荷になってはいけない。私もそろそろ子離れ、みたいなのをしなきゃ」って。彼の手駒でいるのはもういいんじゃないかって。答えを提示してくれない出題者なんて、ってね。
だから消した。全部消した。もう二度と会えないと思う。
でももし会えたなら伝えたい事がある。恨みごとじゃない。
本当に色々お世話になりました。迷惑いっぱいかけちゃってごめんね。でも本当に大好きだった。
そして、私を成長させてくれてありがとう。貴方のおかげで、おしゃれの楽しみを知った。勉強の奥深さに興味を持てた。運動する事の爽快さを感じれたし、自己主張の上手い方法も模索できた。
全部全部、感謝してます。私を作ってくれて、ありがとう。
本当はちょっとだけ、連絡先消したの後悔してるんだよね。でも仕方ない。本当に運命の人なら、いつかまた会えるでしょう。
って事で今は絶賛フリーなんだけど。何人かと付き合ってみたり、なんだりして思ったのは、彼を超える男なんて一生いないなーってこと。あの頃の情熱どこいったー、って感じで、まず好意持つ相手がいないし、寄せられてもキモ、としか思えないし。スマートさ無しに下心ありありで近づいてくんなよ陰キャラ共、って笑っちゃうあたり、つくづく性格悪い女だなって思う…。
まあ、支離滅裂な小瓶だこと。じゃーね、また、ばいばい!