浪人生の後悔、ただの独白。懺悔。僕はただの愚か者だ。こんなにダメな人間はそういないと思う。本当にバカな人間だ。
昔から人見知りで根性のない、軸の弱いやつだった。少しのことにつまづくとすぐに周りの目を気にして、内側にこもって自分の身を守ろうとした。いわゆるかっこつけだったのかはわからないが、自分を見る視線が気になってしょうがなかったんだと思う。
そんな僕が某私立大に行きたいと言い出したのは高校三年の夏前だった。
きっかけは両親の知り合いのOBが紹介してくれたことだった。そこで見たキャンパスや学生の雰囲気が自分に合っていそうだった。ここかもしれない。土壇場で言い出したことに両親をはじめとした周囲は当然驚いていたが、決めたことならと塾へ通うことを許してくれた。これで大学に受かる。そんな甘い考えだったのかもしれない。
だが飛び込みで入った塾で、僕は受験の過酷さを知った。小中と全く勉強をする習慣がなく、出席日数が足りていれば入れるような高校の人間がいきなり受験勉強をこなせるわけもなく、夏を超えたころに勢いは失速してしまった。勉強が辛かった。わからない状態で受ける講義は何よりも苦痛だった。先生に聞けばいい話なのに僕は視線が気になるというただそれだけの理由で聞こうともせず、かといって学んだ部分を復習して身に着けようとするわけでもなく。気づけばただ通うだけになっていた。
そのまま受験を迎え、当然第一志望は落ちた。
悔しさはあった、かもしれない。それでも涙すら出なかった。それぐらい僕は本気で受験勉強をしていなかった。だから第一志望が落ちて滑り止めが受かった時も浪人するなんて簡単に言えたのだ。なぜなら一年あれば受かるはずと思っていたから。本気で取り組めるはずと思っていたから。親に頭を下げて予備校に通わせてくださいと言ったときにきっと覚悟なんてしていなかったのだ。あまりにも浅はかで愚かな思考回路だった。
他人がその時の光景を見たらはなからそんな覚悟は微塵も感じられなかったと思う。受験が終わって三月の時点で僕は予備校を探すわけでもなく一日中オンラインゲームをしていた。親から予備校の候補を聞かれてもゲームをしたい理由ではぐらかしていた。そして『親に言われる形』で大手予備校に入学。四月に入ってすぐだった。
言われる形ではあったが浪人すると自分で決めた手前、その頃はまだ幾分やる気のようなものがあり、講義もきちんと受けて復習し、一日のほとんどを勉強に充てていた。isが何かすらわからなかった英語も夏前には長文が読めるくらいにはなっていた。それくらい成長はあったはずなのに。
夏の模試が終わった直後の面談時に担当教員に言われた一言がすべてだった。「この調子で英語を頑張れば志望校の合格ライン超えますよ。第二志望の方は余裕です」それが頭のどこかにしみついてしまったのだと感じている。(このままいけばなんとか受かるのか)。慢心を招く要因だった。ここからずるずると予備校を休みがちになった。一度休むとなかなか通えない。当然自宅で勉強なんてできっこない。オンラインゲームに手を出してしまうから。夏前まで時間を決めてコントロールできていたはずの一日のスケジュールは一時の感情ですべて崩壊した。たまに単語に触れる程度であとは動画を見るかゲームをするか。周囲にも自宅でやってますとごまかしていた。阿呆にもほどがあった。
そして12月に入り、受験まであと一か月というときにふと触れた過去問を見て僕はようやく我に帰った。今まで読めていたはずの英文が読めない。文法の知識も大半が抜けていた。気が付けば涙がにじんでいた。僕は今まで何をやっていたんだろう。後悔先に立たず。バカだ。受かったわけでもないのにその気になって怠惰な毎日を過ごしていた。
だからここで懺悔しようと思う。お父さんお母さん。本当にごめんなさい。こんな愚かな息子は世界中のどこにもいません。二人とも僕のことを信じて送り出してくれたのに。僕はその気持ちを蔑ろにし、何百万という大金をどぶに捨てるような行為をしてしまいました。自分のことなのに本気になれなかった自分が情けない。ごまかしてその場しのぎをしていた自分が情けない。わかっていたのに防げなかった。一年前のこの時期はまともに勉強しなかった、だから今度こそはやり遂げると決意していたはずなのに。はずだった。甘かった。甘えていた。優しい両親の気持ちに甘え、応援してくれるみんなの気持ちに嘘をつき、同じ失敗を繰り返すなと言う自分に酔って、勉強したつもりでここまで来てしまった。チャンスがあると油断してしまった。自分がひどくちっぽけに思える。なんで目の前のことにきちんと向き合えないんだ。中学時代に高校受験の合格発表でみんなが泣いていた理由がやっとわかった。一生懸命勉強したのに。その思いを三年も前に味わって、その悔しさを大学受験に生かしていたんだ。恵まれた環境の中で、その過酷さを知らずにぬるま湯につかりながら浪人しますなんて簡単に言ってしまっていたんだ。すべて自分が招いたこと。本当に申し訳ない。もう一年だけ勉強したい、浪人させてください。そう言ったときのお母さんの顔を忘れてしまっていた。滑り止めを蹴った話をした時のお母さんは涙目になっていた。でも応援するって言ってくれた。そんないい母親の息子なのに。自分をコントロールすることもできないなんて情けない。お父さんも、内心不安だったと思う。口では陽気なことを言っていたけれど、忙しい合間にラインで長文の励ましのコメントを送ってくれたり、たまに電話をかけてきてはバカな話をしてくれた。ありがたいことなのに。僕はまだ二人のことをオヤジ、お袋と呼べるような人間じゃありません。
受験まであと一か月と少しになりました。今更ながらのバカが告白する後悔です。おそらくこれを聞いたお二人は情けなく、ろくでもない一人息子だとお思いになるでしょう。こんな幼稚で、未熟で、身勝手で、どうしようもない親不孝な息子をどうか、どうか許してください。
52084通目の宛名のないメール
お返事が届いています
ななしさん
辛かったですね。
長い人生です、そんな事も自分の糧になる日も絶対にあると思います。
きっと同じ思いをした人の気持ちを理解できる優しい人に慣れていると思います。
笑える日が来ることを祈っています。
ななしさん
高2です。進学校に通ってはいますが受かったことに安堵し
死ぬ気で勉強したことがありませんでした。
ビリに近い成績のくせに塾にも行かず(行っても長続きしませんでした)周囲に何度もやばいよと言われながらも毎日なんだかんだ理由をつけてFPSで遊んでしまっています。
主さんの話を読んでとても他人事とは思えませんでした。
あと約1か月、相当しんどいとは思いますが死ぬ気でやるしかないと思います。僕もとりあえず机の周りのフィギュアを
片づけ、ゲームアプリを抹消するところから始めます。
でもつらくなっても絶対に死ぬことだけは選ばないでください。忙しい中これを読むことはないかもしれません。でも
僕は主さんをずっと思いながらこれからを過ごすことにします。聞き飽きたかもしれませんが頑張ってください!ずっと応援しています。
あなたの支持者より。
ななしさん
とりあえず理由つけて学力の低い大学行こうぜ!
ななしさん
いつの小瓶か分からないけど、自殺だけはするなよ。それこそもっとも親に迷惑を掛ける行為だ。子供を自殺させてしまった親として周囲からもみられてしまう。
別に良い大学に合格するだけが、良い人生を送れるとは限らないんだ。また入ってから頑張らないと行けない。それに気がつかない奴らは中退など挫折する。
多分君は、頑張らない自分に失望してるんだ。なら、受験で頑張るのが難しいなら、他の事を頑張ってみようぜ。小さな事でいいから達成感味わってみようぜ。例えば筋トレするとかね。そこから君は変われる。だから、あんまり自分を卑下するなよ。
以下はまだお返事がない小瓶です。
お返事をしていただけると小瓶主さんはとてもうれしいと思います。