ガタンと揺れた瞬間。
吊革を無意識につかむ。
その腕には繊細な筋が浮き上がり、うっすら見える青い線とともに直線的な模様がえがき出され。
にぎる強さに応じてしなやかに浮かび消える様に見とれた。
更なる揺れ。
手首を動かし、支え方を調整しているつもりが、いつのまにか遊びになる。
ひねりを変えるたび、薄い陰影をおびる骨、あくまでも白い内側の肌、一点のほくろ、の織りなす景色が妙に美しいのだ。
ただこれは、
私の手が、若い娘の手にしては幾分痩せているほうだから、静脈なぞ浮かぶのであり。
私の耳が、電車の揺れに負けるような平衡感覚しか持たないから、手首をくねらせることとなるのであり。
自らの身体に魅せられるなんて、まずありえないナルシシズムを発揮する、通勤電車内のひとり。
なずな