夢を見た
私が歩いていて、そのちょっと前をあなたが歩いている夢
私はずっと我慢したけど、ついに走り出してあなたの横に行って、「あの」と声をかけた
あなたはまるで私がそうする事を望んでいたかのように顔を赤らめ、嬉しそうな表情を見せた
私もとっても幸せで、どこか恥ずかしくて
2人でお喋りして駅までの道を歩いた
本当に楽しかった
会話の中で、私はあなたのことが大好きだと言い、「どうしたらあなたの彼女になれますか?」と敬語で聞いたのをハッキリと覚えている。
するとあなたは何も言わずに、私の手を握ってくれた
あたたかくて、やわらかくて
抱いて欲しかった
あなたも、別に構わないよ、みたいな態度で
両想いだった 愛されていた 幸せだった
こんどまた会いに行きます。恥ずかしくなっちゃいますね、なんて笑いあって
とにかく幸せで楽しくて
地下鉄の駅に着いて、私が先に電車に乗って
あなたはずっと手を振ってくれていた
私もずっと手を振り返した
夢が終わって、うたた寝のとき、私はこの夢が現実の出来事だと信じきっていた。
「やっと、やっと報われた。やっとあるべき形になれたんだ。やっぱりこうなる運命だったんだ。」
そんな事を思いつつ、意識は次第に正常になり
私はそれが現実ではない、夢である事にぼんやりと気付き始め
絶望はせずとも、「まあ、そうだよな。そうだ。」と感情も無く、この現実を受け止めた。
夢に出てきた「あなた」とは、私が想いを寄せているバンドマン、ミュージシャン、つまり、俗に言う芸能人であり、ステージの上の人間である。
私は彼に恋をし過ぎて、頭のネジが外れているのだ。
どうすべきか、ずっと考えているが、答えは出ない。
涙が出るほど愛しくて、大好きで
もはや自分が何に対して恋をしているのか、よくわからない。
なぜなら彼はあくまでも芸能人としての彼を演じているに過ぎないから。私は虚像に恋をしているのだ。
だとすれば、この溢れる想いはどこへと向かうのだろうか。
誰にも届かず、乾涸びて地面に降り積もるのだろうか。
私はいつか、その愛の死骸に埋もれ、息を詰まらせて死にゆくだろう。
私の世界にはあなたしかいない
しかし
あなたの世界に私はいない
それでも
私の人生に、あなたという存在があって、私は本当に幸せだったと思う。
来世ではファンとしてではなく、人間としてあなたと出会いたい。
もしも来世がそうであるなら、現世を狂人として一生1人で過ごすことも、大した苦痛にはならないだろう。