20歳を過ぎてからの思い出がない。
思い出すのはいつも学生時代のことばかり。
最後に好きな人ができたのも学生時代だった。
それからの恋人は、たださみしさと性欲を埋めるだけの存在だった。
ここ数年付き合った人たち、苗字すら知らない人もいる。
どんな漢字なのか。好きな食べ物。趣味。行きたいところ。何も知らないのに、
さみしいから付き合う。きっとお互いそうなんだろう。
家でしか会わない。外でご飯とか、水族館とか、そういったデートらしいデートなんてしなくなった。
家で会って、セックスして、寝て、終わる。雑談なんてしない。さよならしたあとはもう顔すら曖昧になってる。
そんな人が何人もいた。セックスをしている間は会話しなくていいから楽だ。
最近漫画を読みはじめた。ふとしたきっかけで女の子同士の恋愛物にハマって、結構お金を使った。
漫画の中の彼女たちはキラキラ輝いていた。ちょっとしたことで赤面する。特別な人がいるって、幸せなことだと思った。
私が誰かにとって特別な存在になる日は来るのかな?と思った。赤面することがこの先あるのかな?
私がラインしたら喜んでくれる人、会えなくてさみしいと思ってくれる人、私のために何かしてくれる人。
そういう当たり前の恋愛がもう違う世界の出来事のように感じる。
そのたびに学生時代を思い出す。
好きな子からのメールに一喜一憂して、返信は2分以内には返していた。
一晩で100通以上やりとりしていた。たくさん話したくて、ウィルコムを買った。
デートの前の日は眠れなかった。キスするのにめちゃくちゃ気を使った。
そんな日々を思い出して、一人で落ち込む。
今の私は、鳴らないスマホを握りしめてマッチングアプリで誰にでもいいね!を送る。
名前も何も知らない人とくだらない会話を少しだけする。
そのまま連絡を取らなくなる。また誰かにいいね!を送る。その繰り返し。
薄暗い部屋で、それを繰り返す。こんな生活があるか。