生きていればいいことがあるなんて、
そんな綺麗事言われたら、私はあなたを妬んで、八つ当たりしか出来ないだろう
奴隷として育てられ
人柱として押さえつけられ
軟禁の中で空の色を忘れた
我慢の先に幸せがあると、当たり前のように騙されたの
髪に花を飾るような女々しさもあった
子供のように振る舞えと言われればその通りにした
求められる完璧に引き摺られるがままに従った
全力の抵抗と絶叫に、微塵もゆるまない凌辱の中で、私の無価値さを知るまでは
人間は悪魔だ
平気で奪っていく
私は盗めるときにも盗まなかったし
与えられる前に与えてきたのに
ひどい疲労と労働に、麻痺しきった感情
目深に被った帽子の影から垣間見る世界に
力強く闊歩するハイヒール
私はボロボロのシューズの中で恥じ入るように指先を縮めながら
もしもお給料が支払われたら新しい柔軟剤を買おうと思っていた
未払いのお給料、奨学金の返済を差し引いて、夕食を抜いて、柔軟剤を買うの、なけなしの誇らしさのために
アカギレだらけの割れた爪
冷たい玄関、虚しい生活
顔も向けず、私の柔らかな声音だけに満足しきる形式上のご主人様
悲しみから逃れるためにタッチするスマートフォン画面に表示されたウェディングの広告は私にとって残酷なナイフでしかない
みんな騙される
少し高い声の挨拶と、それに添えただけの笑顔に
スーパーの見切り品の寄せ集めで作った適当な和え物のような私の笑顔に
もう育ち盛りって感じじゃないのは一目瞭然でしょ
ご飯にありつけてないだけで、食いしん坊でもない
奢った食事に夢中になる私を眺めて楽しむだけなら、ペットでも飼ってちょうだい
傷物の駄犬を相手にするのは、あなたがたの自信のなさであって、私に厚かましくする理由ではないはず
だけどみんな騙される
そして人間は悪魔だ
帰る場所もない
鞄は盗まれたみたい
靴はいつの間にか脱げてしまった
この街には知り合いもいない
誰もが誰でもないの
日が暮れて肌寒くて
ああ、上着もどこにやったんだっけ
変わろうとして
変わりたくて
自分ごと壊れる覚悟で
急ブレーキをかけたときには
ゲームオーバーだよと
他人事のように煌めくネオンライトが告げた
誰もこんな私を知らない
そしてみんな騙される
残念だけど人間は悪魔だ
その事を意識してしまえば
現実は私を急速に窒息させた