私は田舎の農家の娘。
3人の兄妹と両親と祖父の6人家族。
農家といっても様々ですが、私の家は『米と麦と食肉用の牛』を生産しています。
農家に定年なんてないので、祖父は病気で倒れる75歳まで現役で家を引っ張ってきました。
天候に左右される職業。
米と麦の収穫時期は日の出から夜遅くまで家族全員でずっと田んぼで働いてます。
(春の収穫はゴールデンウィークに重なるように調整します)
もちろん残業手当なんてありません。
雨が降ったら田んぼの水の量を調整しに何度も何度も行かなくてはいけません。
土砂降りの日も同じ。
屋根の下で出来ることを全部終わらせて、
なるべくその年の収穫が遅れないようにします。
また、台風や雷の影響で田んぼ一面が全滅したりします。
苗も肥料もタダじゃない。
倒れた稲や麦を見て、泣きそうになったこともあります。
農業経営者で税金不申告、または申告もれを聞いたことがありますか?
公民の授業中、先生が
『自営業者の税金は自己申告だから払わない人が居てもわからない』と言っていました。
そんなことしたら生活できなくなります
その時はあまりにも怒ってしまい、社会科教室から出ていってしまいましたが…
一理ありますよね…
でも、年金は公務員と比較すると足しにもならないくらい。
だから定年を迎えても引退できないのです。
不申告なんてしたら元が少ない年金がもらえなくなります。
今、税金を出し渋ったら老後の生活がなくなります。
一定額のお金がきちんと入る月なんてありませんが、
税金はきちんと払ってます。
数年前の狂牛病、もう覚えていない方もいらっしゃるかもしれませんが…
狂牛病の影響で肉牛が売れず、ご飯がなかった時期もありました。
また、牛が病気で倒れて廃棄になり、牛を買った値段と餌代が飛んでいったことが何度もあります。
冷夏の影響で満足な量の米がとれず、蝋燭で過ごした夜もありました。
田んぼには無責任なビールの瓶や缶、ビニール袋等のゴミが散乱し、良く確認したにも関わらず、
空き缶が稲を刈り取る機械に絡まり、機械が壊れた時もありました。
機械を新調しても修理に出しても掛かる金額は膨大で。
その時の収入は殆どが機械代に消えました。
学校の授業料が払えず、親戚に頭を下げに行ったりもしました。
収入が安定しないので銀行がお金を貸してくれるという話はあまり聞きません。
農家は一定収入のある副業もしないと成り立たなくなってきました。
それが時代の流れです。
農業で赤字が続いても私達が学校に行けるようにと
代々受け継いできた田んぼを泣く泣く潰してアパートを建てました。
私達3人が安心して学校へ行けるようにと…
話は変わりますが、
私の地域の小学校の教頭は転勤してきて1ヶ月もたたないうちに
不登校になりました。
教頭が、ですよ?
2年後に転勤になりましたが、
その出勤していない2年間の給料はどうしたのかとPTAが聞いたところ、
『全額支給していた』そうです。
働かなくても給料がもらえていいなと思ってしまいました。
また、ひとりひとりができることが違い、仕事の成果と誠意に明らかな差があっても一定の収入があるのはうらやましいです。
(※批判がしたいわけではありません。全ての方が仕事をしないと言っているわけでもありません。)
農業には有給休暇もありません。
私の家族は泊まり掛けで出かけたことがありません。
泊まり掛けなんてしたら
牛の餌を誰があげるの?
誰が面倒を見るの?
遊びに行くのに給料がもらえるなんてうらやましい。
残業手当や年金の金額の差、有給休暇の有無などは埋めようのない差なのですが、
私の父がスーツを来て出勤しないのがおかしいと、いじめられたこともありました。
サラリーマンの家とは保険証の色と仕様が違うので
ばかにされたこともありました。
まだ小さな子供だったので、サラリーマンの家などとは違う点を並べたて、笑われたこともあります。
汗にまみれて作業している家族にむかって、汚いと言われたこともあります。
否定はできないので(汗くさいですもん…)
子供がどれだけ素直なのか今になってわかりますけどね。
収穫の時期って、なぜか定期テスト1週間前に重なるんです。
勉強の時間がとれなくて、徹夜で勉強したりもしました…
正直、家の仕事が嫌いな時もありました。
でも、食物を生産する作業を間近で見て育ってきてよかったと思ってます。
私の両親は作り続けます。
なんで頑張るのかと聞いたことがあります。
『誰が食べるかはわからないけれど、
何処かで美味しいって言ってもらえるようにだよ』
まだ幼いながらも年を重ねてくると、感じるのです。
毎日、3回も食事があるって幸せ。
様々な味を食べられるって幸せ。
家族全員の顔を見ながら一生懸命仕事が出来ることが幸せ。
仕事が終わった後の、達成感と日焼けしてしまった笑顔が幸せ。
どうか、ゴミを捨てないで。
自分が食べる物の上にゴミを乗せないで。
嫌いな食べ物だからといってお皿の端に寄せないで。
少しずつでいいから、食べてみて。
みなさんが食べている食物のひとつひとつに心がこもっています。
必死に育ててきた生産者と
立派に育ってくれた全ての食物に感謝をこめて。
いただきます。
ごちそうさま。
最近、聞こえにくくなっているこの掛け声が
食卓を包みますように……
あくまでも私の立場からの意見です。
公務員の方々やサラリーマンの方々を批判しているつもりもありません。
長くて読みにくい文を読んでくださってありがとうございました。
ド田舎の農家の娘、高校3年 九葉