失恋した数日後、
私はライブトーク(オープンチャットの公開の音声通話)で、前から仲の良かった同じ副官理人たちや新規の人に、〇〇と別れた事を話した。
彼らは、私が想像していたよりも遥かに驚いた反応をした。
まあそうだろう、〇〇は誰にでも優しい人だったから。
……本当に、〇〇は最後まで優しかった、、。
指が、ライブトークのマイクボタンをタップした。
ミュート状態だ。
私は、だんだんとぼやけてくる視界をぼんやりと眺めていた。
新規の人や副管理人達の楽しそうな笑い声が聞こえる。
久しぶりのミュートモードで、どのタイミングで解除すれば良いかわからない、が、ただ、、
ただ、やっと実感が湧いた失恋への悲しみと、いつもの自己嫌悪感に体が土の中に埋められそうになった。
とうとう、目の前に何があるのかもわからなくなってくる。
声を押し殺し、頬に水滴がゆっくりと落ちていく感覚に意識を向ける。
私は、どうやら泣いているらしい。
よく考えてみると、泣いたのは失恋してからは初めてだ。
「あれ、かんちゃーん?どしたんやろ、、」
あ、新規の仲良くなったばかりの女の子が、私を呼んでいる。
私は急いで涙を拭き、息を整え、ミュートを解除した。
「ごめん、ちょっと意識ぶっ飛んでたっ」
私は、無理があるくらいに明るく返事をする。
変なところで強がる癖は、心配をかけたくないという気持ちが勝ってしまうからだろうか。
それならもういっそ、誰かに包み隠さず、全て話し尽くしてしまおうか。
私は泣きそうになるのを抑え、会話に入る。
でも、、どうしても会話に入り込むことはできず、何度も泣きそうになる。
「ーーと、かんー、個チャ見ろー」
よく文面で話していた◻︎◻︎に、私と他複数人が呼ばれた。
「お、おう」
とりあえず、返事をしてから、◻︎◻︎との個人チャットを見てみる。
内容は、「△△の前で俺らのグルラの話すんのやめよ」、という物だった。
実はさっき、私達はライブトーク中にみんなで個チャを繋いだ(◻︎◻︎とは元カレと付き合う前から繋いでいた)ばかりだったのだが、個人情報が漏洩するのを防ぐため、連絡先を繋いでいない子がいたのだ。
それが△△。
確かに、見てもないところで繰り広げられる話をされても、△△が気まずいだけだ。
本当に、他人に気の遣える良いやつだ。
気を取り直してみんなが会話を始めると、今度はグループLINEの話は、最初からまるでなかったかのように無くなった。
「おーーーいーー、かんーーー、個チャ見ろーーーー」
どうやらまた何か送ってくれたらしい。
「はいーー、見ますっ」
『強がったり、無理して話さなくていいから』
私は、目を見開いた。
そして、どうやら無意識のうちに口から何やら発していたらしい。
「あんた、ほんま性格イケメンやなぁ」
言い終えてから恥ずかしくなって、また、マイクボタンをタップする。
ミュート。
私の声は何があっても聞こえない、大丈夫だ。
他の人も、私と同じような事を言い出すのだろうか。
みんな、私よりもあいつを褒めるような事を言うのだろうか。
……羨ましい。
自分の思考が恥ずかしくて、みんなの反応も聞こえない。
私は手のひらに熱くなった顔をうずめ、ただずっと、唸っていた。