僕は、物心ついた時から、ずっと一緒にいる君が好きだった。
何年も愛してきた。
でも、君は他の人のことが好きになった。
その人は、完璧で、顔も頭もいいような、女性なら誰でも憧れるような人だった。
その彼はというと、たいして女性に興味がなかったらしい。
しかし、君を知ってからは、幼馴染の僕と同じぐらい、いや、それ以上に、君を大事に思った。
まるで、シンデレラだ。
僕は、そのシンデレラを必死に庇う、本来ならない役になろうとした。
でも、僕にはその資格や力がない。
君の彼氏…kさん(仮)は、それを持ち合わせていた。
だから、僕は下がるべきだ。
あの二人を邪魔してはいけない。
長い間、苦しんできた君を救えるのなら、kさんに僕は役目を譲る。
それが、力がない、僕にできる手段だ。
情けない自分が嫌になって、ふと目を逸らすと、視線の先に、君とkさんが立っていた。
幸せそうに微笑む君と、それを暖かな目で見つめるkさん。
二人に気付けれたくなくて、僕は足を早め、夏に近づく風を切っていった。
朧げな幼い思い出の中に、「好き」を置いて。