中学生の時から「アニメ声」「声優さんみたい」って言われてきたけど、それが侮辱のように思えてきた。
実際に声優をやってみて、強くそう思った。
高い声と低い声で二役を演じることになって、いわゆるステレオタイプのような存在に気付いた。
明るい主人公は高い声で、天然系でちょっと馬鹿っぽく演じる。
クールな敵キャラは低くて芯のある、自信ありげな声。
あらゆる作品で似たようなイメージが共有されていて、こういった声の使い分けに違和感を覚える人は少なくないと思う。
ということは、元々高めの声であるあたしも、そういったステレオタイプの影響を受けていても可笑しくない。
普通の範囲内での高低ならそんなことはないでしょうとも。
でもあたしは常識外れな声色で、故に初対面の人からはほぼ確実に声を指摘されるような人間。
思い返せば「性格がイメージと違った」という言葉は何回も聞いたし、酷いときには「媚を売るために声を作っている」なんて思われた事もあった。
誰が好き好んで現実離れした声なんて使うかよ。
どうしてアニメや吹き替えのキャラクターは、「こんな女居るわけないだろ」みたいな声をしているのだろう?
媚を売るような「カワイイ声」、そんなフィクションのせいであたしのリアルが作り物認定される。
アニメ作りは好きだけど、見るのはやっぱりキライだ。
あり得ない程高い声、そして作られていくあたしへの偏見。もうあたしの声がアニメに関連付けられるのは嫌だ。
でも、そういう声に需要があるから作品が作られ続けるし、そして無くならないのでしょう。
あたしとて他人の好きなものを貶したい訳じゃない。ただあたしの声を消費しないで欲しい、アニメのように扱わないで欲しい。
もうちょい欲張れば、あたしにアニメの話題を振らないで欲しい。
もし、低い声の元気いっぱいなキャラクターが、高くて明るい声のクールなキャラクターが現れたら、そしてそれも当たり前のように定着したら、あたしの声への反応はもっと違うものに代わるのだろうか。
しょーがない。作るか、そういう作品。
運の良いことにあたしは主題歌と脚本と簡単な絵くらいなら作れるし、ステレオタイプとチグハグな作品を作ってやるか。
気が向いたら。
声優はけっこう楽しい。
監督から指導されっぱなしだけど。
一番難しい注文は、「主人公は頭弱い系だからもっと知性を抜いた声にして」
何だよ知性の無い声って。