この頃よく昔を思い出します。道を歩いている時とか、一人でいる時とか。
ふっと思い出しては、落ち込むのです。
ひどかったな、あの頃は、と。
でも、こういうことができるくらい、今は平和です。本当に、平和。どうしてこんなにも、違うんでしょうね。
暴力に怯えない生活が送れるなんて、想像もしてませんでした。顔を上げて歩いても大丈夫。目を見て話しても。皆、対等に接してくれるんです。
それでも、思い出すのです。そして誰にも、話せないのです。怒りと悔しさが、急に心に広がって、一人でふさぎ込んでしまいたくなります。
いっそ忘れてしまえばいいのに。
僕は、生まれたことを恥じていません。生きてきたこと、誇りに思います。
罪は受けます。神様、裏切り者の僕を、許して下さいますか。
毎日安心しているはずなのに、いまだに戸惑っています。自分がひどく、場違いな気がして。
生まれる場所は、選べないけれど。
不思議なほど、恵まれた国にいる僕らが、幸せであれれば、良いものです。