浅はかだった。
問題ないと思った。
心配の声を背に受けながら旅立った。
実に浅はかだった。
いつどこで起きるかなんてわからないなんてものはわかってたはずなのに、
起こるならば私のいる地が先だろうから、と、油断していた。
先に向こうがそうなることを考えていなかった。
そちらに向かえない。向かえない。向かえない。
ああ考えていなかった。
家族を残した地の方が先に来てしまうなんて。
考えていなかったんだ。
それから数週のうちに身内の一人が空に還ったことも。
心臓が痛かった。手先が冷たくなった。
ああこんなことなら否が応でも私はそばにいたはずなのに。
こんな地まで一人で来なかったのに。
可能性の一つとして考えもしなかったんだ。
「まああんたもこういう状況になるを覚悟した上でそっちにいったんだろうけどさ」
母は言うがそんなことはない。
恥ずかしながら考えもしなかった。
私の方に先に来て、私が生きるか死ぬかするとばかり思っていたから。
ああ、ああ、
たまにくるホームシックが極端に強くなった。
なぜ私はこの地に来てまで働いているんだろう。
アパートと職場を泣きながら往復する。
甘かった。ただただ考えが甘かった。
2年と2ヶ月前、
「とりあえず三年は頑張ってみな」と私を送り出した母の顔が浮かぶ。
父によればその後随分泣いたらしい。
半端に叶った夢の残骸を拾い集めて生活していたけれど、もうもう意味が分からなくなってきた。
なんでこうまでして私はここにいるんだろう。
三年目の今、これを乗り越えれてまた春を迎えれば何か分かるのか。
苦しい、苦しい。
息ができないみたいな感覚。
わからない。ぶつけるところがない。
寂しい。悲しい。こわい。こわい。
いっそのこと逃げたい。振り返って走り出したい。
これだからゆとりは。そう言われるんだろう。
ああいやだ。笑えない。
誰にもこんな感情ぶつけられない。
うまいこと笑えない。涙が出る。明日も仕事なのに。
だれか聞いて。
考えが足りなかったバカな奴のバカなこの後悔を。