塾のテキストに面白いエッセイが載っていた。
古井由吉の「哀しくグロテスク」。
特に印象深い一段落を。
歌手のほうでも、会場でキャアキャア騒ぎ立てる客は
たいしたファンではないという。
ホントのホントの熱狂者は、会場では静かに、ややぎごちなくふるまい、
終えると張りつめた顔をして足早に会場を去り、
途中でラーメンなどを重々しい目つきで食べ、
家に着いて部屋に閉じこもると、さめざめと泣くそうだ。
読みながら笑って、受講中もブースの中で笑いを噛み殺してた。
でも、かなりわかる。
歌手のファンだというわけではないけど、
数年前、修学旅行のレクで、好きな先生が舞台に上がって歌を歌った時。
それまでたいして人気のなかった先生が
「かわいいー」とキャーキャー騒がれ、一躍人気に。
私はその時ずっとうつむいていて、歌ってるところさえ見られなかった。
そして、修学旅行から帰ってきた時、一人泣いてた。
それから、このエッセイ、
「自分の想いの深さと相手の行動とを比べると、
愛着の深さ故に、相手がどうしても浅薄に見えて、侮蔑してしまう。
しかし、その侮蔑さえも、愛着の火に油を注ぐ。」
みたいなことも書いてあった。
あぁ、こんな恋、憧れ、執着…、
何と言い表せばいいかわからないけど、またしてみたいなぁ…。