彼女に手紙)
夜明けを待たずして
目があいて
忘れちゃならぬと
かけおりた
あしゆびがつかんだ
砂の感触
寄せて返す波の
濡れるあしくびの
生々しさ
大事な事がこの手から
さらりと
こぼれおちてしまうまえに
かきとめておかねばと
かけおりた
その階段をかけおりた
わたしはあなためがけて
ボールを投げた
あの日あなたがボールをくれたのだ
わたしはあなたに
投げ返した
そのときわたしははっきりわかった
わたしはあなたに会いたくなった
あなただから
ボールを投げ返した
わたしはあなたがすきなのだ
わたしにはかけがえのないひとなのだ
めざめてそれは
なぜだろう?と
問うてみた
わたしはあの日
あなたにすべて
面と向かって秘密を話した
あの日のわたしは
どこにも逃げ場がなく
途方に暮れてうろついていた
ひとのやさしさにあぐらをかいて
罪悪感でいっぱいで
最後の最後に
タガが外れて
ヤケクソでほんとのことを
くちにした
あなたはわたしを
ばかめることもなく
できごとのすべてをきいていた
わらいににげることもなく
できごとのすべてを
きいていた
あなたは
あなたのよるを
あなたのひるを
また訪れる
その朝のなかで
いつか決め込んでしまった
その罪を
手放すために
ひとつずつ
捨ててしまったカラフルな
キャンディの包み紙の山から
捨てる必要のなかった
大事なひと粒を探してる
徒労とわらうこともなく
徒労とわらうこともなく
わたしとあなたのあいだには
時間と距離がよこたわる
だけど
いつかあえたなら
たくさんはなしがしてみたい
今度はもっと
下世話でバカな
はなしでわらってみてもいい
まじめなはなしができるから
バカげたことも
いえるだろう
そんなにほんとはかんたんに
ひとをすきになれないわたしが
なにかをおもうということは
掛け値なしだからこそ
おもうこと
あなただからこそ
思うこと