自分は今まで、自分のためだけに生きていこうと思ったことはない。たいていは他人の要求ばかりをのんできた。それが、自分にとって損なことであろうとも、仕方なしにのんできた。
とはいえ、自分にだって欲や負けん気はある。他人とのやりとりの中で「チクショウ」と思うことはたびたびある。たまには自分の意地を通してみたい、わがままを言ってみたい、威勢よく振る舞ってみたい。そんなことを感じている。
しかし、他人のためにだけ生きてきて、自分の欲に蓋をしていたら、それが内部でどんどん腐敗してきた。結果、劣等感という形で爆発しそうだ。
あいつがうらやましい、こいつがうらやましい。なぜ自分はこれができない、あれができない。それもこれも全て周囲が悪い。環境が悪い。駄目だ、そんな悪い心は内に秘めておけ。無理だ、心が破裂しそうだ。劣等感がどんどん膨らむ。駄目だ、感情は殺して他人につくせ。嫌だ、自分を生きてみたい。……。
来月、入籍する。相手には内に溜まった劣等感を見せず、外面だけを見せ続けている。
彼女は、自分とは生活レベルがかけ離れた、"いいとこ"のお嬢さんだ。
正直、劣等感でいっぱいだ。いつか爆発するだろう。