僕は、ずるい人だ。
自分のための『ずるい嘘をつくこと』を許してきた。
自分の求める……自分。理想。
正しい者となることで自信を得ようとしていた。愛される価値があるはずだと、必死に僕はあがいていた。
家族に会いたい、僕を失望した目で見ない昔の家族に。
優しかったあの頃へ、帰りたい。
目の奥に、諦めと嫌悪感を浮かべる母を見て僕は自分を殺すことを決心した。
そして、断念した。
山に籠った。神社の裏手でうずくまっていた。
朝から晩まで、歩いて……歩いて……歩いて……神社でひたすら こう願っていた。
神様、僕を消してください。
そして、僕のような出来損ないの変わりに家族を笑顔でいさせてあげられるような普通の人間を用意して下さい。
……神様、なぜ、僕はみんなの言うふつうがわからないのでしょうか。
もしも、普通を理解できれば、ふつうになれるのですか。
普通を教えてくれる教科書は学校にもありませんでした。
一人一人が違う当たり前をもっていて、それが普通と言うのならば。
何故、僕は普通とは認められないのですか。
何故、皆口を揃えて僕を責め立てるのですか?
普通なんてはじめから存在しないのが、本当なのではないのですか。
誰かの定めたルールとて、所詮は声の大きいものの言い分に過ぎない。
力あるものが、普通を作り、僕のような異端児は肉体的にも、精神的にも、抹殺をされてしまう。
逃げなければ。
だが、逃げ場がわからない。
何処へ向かえばいいのかもわからない。
だから、僕はひとつの企てを考えている。
平凡でも、ありふれた物でも。
僕にとって真夜中の小さな灯り。
大きな挑戦となる。
生きるように、死体のまま息をするだけの人生などお断りだ。
ぼくは
ぼくは 普通を捨てる決意をした
こわい せつない わびしい たとえそれでも頑張って生きるんだ。
どうか、今の心が消えないで欲しい。
くじけないで欲しい。
お願い。消えないで。