私は五歳の時に父と離れ離れになりました。それから二十八年間、一度も会わないまま、先日父が亡くなりました。養育費も慰謝料も一切払わずに、逃げて逃げて行方不明になった父。あれから連絡どころか会うことも一切ないまま私も三十三歳になりました。そして父が死んだ。今もまだ悲しくて前に進めていません。二十八年間ぶりに、父方の親戚の方から父が亡くなったと連絡がありました。それで初めて父のあれからのことを知ったのです。父は再婚していました。私の母と離婚してから数年後のことでした。私は電話口でそれを聞いてショックでした。大人なんだから、色々あるんだよと頭では理解出来ていても精神的にまったくついていけませんでした。おまけに新しい子供も生まれていました。男の子と女の子が生まれていました。私はもっともっと悲しくなりました。兄弟が増えたんです。腹違いの異母兄弟になりますが、兄妹が私に増えたんです。それって嬉しい事なんですが、内心本当はとてもとてもショックでした。なぜ、なぜ、と、なぜ、私に何もしてくれなかったのに、新しい家庭で良いお父さんだったの、と、泣いて泣いて泣きまくった。電話を切った後に、一人で泣きまくった。なんで、なんで、お父さんと、なんで、私を置いて行ったのか、私と母を置いて行ったのか、他所の女性と子供を作ったのか、新しい家庭を持ったのか、どうして、どうしてと、私を見捨ててしまったのかと、私を嫌いにならないでほしい、私のお母さんを嫌いにならないでほしいと、ただただそれだけだった。母を傷つけたあなたを私は許さないと、汚い感情まで出てきてしまった。この感情、自分でも嫌いだ。泣いて泣いて、泣きました。それぐらい、私には苦痛でした。悲しい、ただそれだけの感情だった。悲しくて悲しくて泣きました。愛してなかったんです、私たちを、多分、それだけだった。それだけが、私の気持ちだった。悲しい、悲しい、悲しい、悲しい、悲しくて嫉妬した。私にもこんな感情が芽生えるなんて、思いもしなかった。愛されたかった、ただただ、父さんに愛されたかった、私にはそれだけです。それだけが、今も残っています。私の手元に残っているビデオに映っている父さんと写真に写っている父さん、どれも優しいんです。とてもとても、優しいんです(時々邪魔者扱いっていうか、邪険にされているのかなと思う時もありましたが)私の中の記憶の父は、優しいんです。酔っぱらって顔を真っ赤にしながら帰ってきて、「買ってきたぞー!!」と嬉しそうに言って台所セットのおもちゃを買ってきてくれたこともありました。その時の記憶だけを覚えています。だからそれだけです。だから余計につらいのです。優しい父が、優しくなかったのかなとか。優しいのは、ウソだったのかとか。騙されてたのかなとかあれの父は偽りの姿だったのかなとか余計な事ばかり考えます。父はきっとこんな娘に愛想をつかしていくでしょう。天国か地獄かわかりませんがきっと父はこんな悪い娘を見て幻滅しているでしょう。それが悲しい。私も父に言いたいことがたくさんあったし、毎日時間を見つけては父に言いたいこととか文句を言ってしまいます。好きなのに、嫌い、みたいな好きなのに、なんで!!?みたいな不思議な感情と意味不明な感情が私を支配しています。父に会いたい、今はただそれだけで、本当に父に会いたい。二十八年間、私も父も逃げていました。会いにいくことだって出来たはずなのに、それが出来なかった。出来ない何かがあったのだと思います。それは必須でした。弱いのです、私も父も弱いのです。父は酒を飲み毎日止められずに肝臓を壊して肝臓がんで亡くなったと親戚に聞きました。身体も元々弱い人だった。酒に走ったのです。私も暴飲暴食をしていた時期がありました。大好きな父だった。それでも大好きな父だった。私は父に謝りたい。父さん、ごめんなさいと。ダメな娘でごめんなさいと。あなたに会いたい。