毒のある親から離れたくて、就職で東京に出てきてけっこう経つ。
東京で何とか生き延びて来たけど、常に心の底では過去の自分と闘っていた。
疑心暗鬼な性格のせいか、仕事は人間関係で揉めることばかりで長続きしなかった。
職場のボス的な立場の人間に嫌われてバカにされて笑われて、一緒に仕事出来ない人間として管理者に報告された。
首を言い渡されたり、こちらから辞めざるを得ないというパターン。
未だに分からないことがある。
あのさ、昼に一人で休憩を取りたいというのがそんなに悪いことだったの。
こっちはあんたが分からないほど悲惨な境遇に生まれて、その境遇のせいであんたらと会った頃はもう結婚も諦めていた。
色々なものを抱えながら東京に出てきて、働きながら資格試験の勉強をしてたんだよ。
昼休み位一人でリラックスしたいというのがそんなに悪いか。
そもそもバイト同士で立場も大して変わらないのに、何で昼休みまであんたのご機嫌取りをしなきゃいけないんだよ。
あんたらは指導する立場で古株だった。あんたらの気まぐれと私怨とチームワークがあれば、一人の人間を追い出す位簡単だったはずだ。
人一人の人生をゲーム感覚で台無しにした自覚あるか。何でこっちがあそこまで振り回されなきゃいけなかった。
東京では息をするのが精一杯だった。心から楽しいと思ったことは数える位しかない。
親と離れて暮らしたい一心でそれでも頑張って来た。
本音ではもう田舎に帰りたいと思っている。
でも帰って親と二人きりになったら、私は田舎の閉鎖空間で東京から逃げて来たコンプレックスを抱えながら、親への憎しみを募らせて警察沙汰の事
件を起こすに違いない。
だから田舎には帰らない。親が死ぬまでは。