親友に会った。
彼女はいつも、「ルルーは可愛い」と言う。
それに対してあたしは「眼鏡かけなよ」と返す。
彼女は会う度に、あたしを服屋に連れ回す。
その後は化粧品コーナーか、カラオケか。
彼女が楽しいのなら、喜んで着せ替え人形を引き受けようと思っていた。
「もっと真剣になってよ」なんて言われてしまうけど。
あたしが可愛いなんて、信じられない。
ただのリップサービスだ。
それか本当に眼科の受診が必要なんだ。
高校生の時に、抜毛症で髪の毛を失った。
その時から、「可愛くて綺麗な女の子」なんて全部諦めた。
髪の毛がない女なんて、いくら着飾った所で駄目だから。
服屋のキラキラした雰囲気が嫌いだった。
どうせどれも似合わないから。
美容院に行くのが怖かった。
「頭がオカシイ」あたしを、馬鹿にされるような気がしたから。
気付いたら、バンダナ無しには外に出られなくなっていた。
服を買うのも嫌になって、ボロボロになったものを使い回していた。
どうせ醜いからと、ほっぺに爪で傷をつけもした。
今日、改めて親友に言われた。
「ルルーは可愛い」
信じられなかった。
でも、何度も言い続けてくれた。
気付いたら、四年も切らなかった髪は伸びていた。
四年ほったらかしにしたわりには短いし、所々オカシイ部分はあるけど、結べるようになっていた。
高校生以来ずっとできなかった二つ結びもできた。
昔は二束の髪がうさぎの耳のようだからと「ウサギさん」と呼ばれていたっけ。
もうあたしは、着飾って良いんだ。
あたしを縛る鎖なんて、最初から無かったんだ。
誰もが振り向くような可愛さも、
みんなに愛されるような可愛さも、
そんなものなんて無いけど。
でも、あたしはもう、マイナスじゃないんだ。
普通の女の子に戻れたんだ。
綺麗な服を着ても、お化粧をしても、おかしくはないんだ。
美容院に行く勇気は無いし、まだバンダナは手放せそうにないけど、
少しずつで良いから、失っていた楽しさを取り戻したい。
とっくに諦めていた恋愛もしてみたい。
人格が最悪だから無理だろうけど。
最初がマイナススタートだったんだ。
やっとゼロに戻れたんだ。
どんなに自分の顔が醜かろうが、きっと楽しめるよ。
だってあたし、可愛いから。