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【あとがき更新しました】「液体の味」スピンオフ(?)です。

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江津奈 冴名歌(えづな さなか)のストーリーです。本編を見てない方はリンクからどうぞ
https://www.blindletter.com/view.html?id=266242
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今日は200m。いつもは澪と200mを走るのだが、なんか「気分じゃない」と澪に言われ、1人で走る。まぁ、いつも私の200mに付き合ってくれているのに、800mも走って…随分疲れているだろうに。お疲れ様。
私ってやっぱりわがままだなぁって思う。いつも一緒にいてくれた人が突然いなくなると、
「あー、私こんなに人に頼ってばっかなんだ」って思い知らされる。
「私アップ行ってくる。澪、頑張ってね!」
「うん」
澪の800mは、私の200mよりも早い時間にやる。そのため、澪はとっくのとおりにアップなんて終わっているのだ。澪のこと、応援したい。だから私は頑張って早めに終わらすよう、努めた。

私がアップから帰ると、800m競技はもう既に始まっており、みんなが観客席から離れ、スタンドから800m走者を応援している。私はその中に弟を見つけた。
「あんた来てたの」
「来ちゃダメ?」
物凄く顔が良く、頭脳も完璧なため少し申し訳なくなり、ダメ、と言えないのだ。
「親は?」
「近くのカフェで本読んでる」
「変わらねぇな」
いつどこでも本を読む父と母なので、もう慣れてしまった。
「その本、何?」
「昨日図書館行った時に借りたやつ」
図書館まで行って借りた本を読むことは弟の趣味だ。私は買う派だけど。と、思った瞬間、雨が急に降り始めた。澪がいる組は次の組。きっと雨はやまないんだろうなー。私は応援もせず、ただただぼーっと遠く濁る灰色の空を眺めた。

澪の組。雨は止んでない。というか、もっと降っている。ユニフォームすごい丈短いのに…。
“On your mark,”
800mだから、「Set」の掛け声がない。
ピストルの音。走り出す音。澪の気持ち。ラスト一周の鐘の音。聞こえてないはずのものもあるのだが、聞こえる。想像がつく。みんな一生懸命に声を出して応援しているのに、私だけ突っ立って澪を目線で追いかけるだけ。
ラスト100m。澪もスピードを上げている。後ろからくる風に追い抜かれないように必死に走っているようだった。澪は無事一位。流石ぁ!
「澪ねーちゃん一位だね!」
弟が嬉しそうだ。
「うん、追い抜かされるかと思ってた」
私も耐え抜いてくれた澪に感激した。ズタズタに切り刻んだであろう足で。腕で。すごいな。
もうちょっとで200m。この後に2組あり、200mが始まる。少し怖くなってきた。それに勘づいたのか、弟が背中をさすってくれた。その手はなんだかあったかくて、私がこれまで背負ってきた傷を全て抜き取ってくれるような気がした。

「お疲れ、みお!」
「ありがとう」
なんだか静かだな。まぁあんなに走ったんだし当たり前か。
「ユニフォーム姿、寒そうだね。早く着替えてきなよ」
「そうだね」
やっぱり。なんか違う。走って疲労が溜まったんじゃなさそう。澪が席を立ち、着替えに行ってから、私は深呼吸を数回繰り返した。
「よし、頑張ろう」

200mは短距離とは言え100mほど参加者の人数がいるわけではない。みんな頑張ってるなー。
そんなこと考えてたらもう次の次だ。早い。
「3006番さーん?」
「あぁ、はい、ごめんなさい」
「2レーンでーす」
うわぁ、びっくりしたぁ。こういう緊張してる時に限って急に話しかけてくるの怖すぎる。
「はぁい、次なので、スタブロに準備お願いしまーす」
もう嫌だって。抜け出したい。お腹痛いし。
なんかやっぱみんな利き足右なのかな。私…左だから毎回面倒なんだよな。
「一回下がってくださーい」
“On your mark,”
頭下げて手をついて膝ついて母指球とつま先に当てて…
“Set,”
腰あげて、
走る。
え、前に誰もいない?嘘つけや。まぁいいやとりま走ろう。

結果、後ろから抜かされて3位。それも誤差じゃないかなー。ギリ表彰台、まぁいいでしょう。
「お疲れ様ー」
うわなんかいる!
「お、お母さんまで…。お父さんは?」
「本読み終わっちゃって買いに行ってる」
「金持ちな奴ら」
少しイラついた。自分で稼げるっていいね。
「はいこれ。」
塩分チャージを渡された。ついでに飴2つ。
「なんで飴」
「なんかポッケに入ってたから」
理由が理由だな。まぁ、いいよ。飴、好きだし。それにしても、ラズベリーとりんご。
「ありがとう」
「うん。私帰るけど、奏だけ置いてくから、終わったら一緒に帰って」
「まじか。いいけど。」
「んじゃ、よろしくー」
気軽だなぁもう。

澪のところへ行って、疲れ切った澪を見て一番最初に思った。
「みお、あんた唇真っ青じゃん。大丈夫なの?」
「まぁ、大丈夫なんじゃない?上着もあるし、もうちょっとで解散でしょ?リレー見終えるごろにはもう元気になってると思うよ」
「ならいいけど…本当に大丈夫?」
「そんなに青い?私の唇」
とっても青いと思う。ほんとに心配になってゆっくり頷くしかできなかった。
「…ちょっと髪整えてくる」
澪がトイレに行った。1人になった。そこで鞄から灰色の色に青いハートがついたポーチを出す。カッターと絆創膏の入った中身を覗いて、閉じた。今じゃない、と。
少しだけポーチを握りしめて目を閉じた。

そういえば、澪が帰ってきてない。どこに行ったんだろう。随分時間経ってるよな、髪整えるだけならこんなかからないはず…
早歩きでまず近くのコンビニ。いない。
コンビニの近くの道路。いない。
競技場近くの自販機周辺。いなさそう。
競技場内のトラック。いない。
観客席の方。いなさそう。
そしたらあとは…走った。居た。
「え、」
もう思考停止だよ。トイレで澪が倒れてるとかさ。顔を真っ白にして、濃い黒のまつ毛と長い髪の毛。唇は青い。変わってない。強いて言えば、少し赤色が加わっている。でも全然真っ青なのには変わりない。息してるのはわかった。でもどうしたらいいかわからない。それと自分もパニックすぎて何もできない。やるせない胸元から首、指先に赤い血が滲み出ていくのがわかった。咄嗟に持ってきてしまった灰色のポーチが今手にあることに気づく。落ちる。音がする。澪が仰向けになる。口が動く、目も開く。私が話しかけた頃にはもうどちらも閉じていた。

走って顧問に言いに行くと同時にポッケに入っていた飴を一つ食べた。味はよくわからなかった。走ることしか考えてなかったんだ。

「唯一、俺が大切にできる『居場所』なんだ」

本音が漏れた。

後日談

その日は晴れてて、5日前に母からもらった飴を澪に渡した。すっかり元気な澪。全て言い切って俺も元気。
「あの、」
「なに?冴名歌」
「俺と」
「うん」
「… くれませんか」
「いいよ」

抱きしめた時、太陽が照りつけて汗が滲んだ制服の上に涙を流した。
認めてくれて嬉しかった。
「ありがとう」

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〜登場人物〜

江津奈 冴名歌(えづな さなか)
このストーリーの主人公。

黒瀬 澪 (くろせ みお)
「液体の味」の本編ストーリーの主人公。冴名歌とおんなじ陸上部。

江津奈 奏 (えづな そう)
江津奈 冴名歌の弟。読書が趣味。吹奏楽部。

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あとがき

ご好評いただきました「液体の味」
題名がないとはいえ、仮の題名ならあるんですよw

なので、液体の味って付けました。
前貰ったお返事の中で、
「雫が零れるその刹那」
という題名をつけていただきました。
漢字がかっこいい!
雫こぼれまくってるもんなぁ

あえて涙とか雨って言わないのがいいですね(*^^*)
ありがとうございます。

いやー飴の味を考えるのに少し時間かかりましたね。
苦労しましたぁ。
あと一番最後の展開をどう持ってくか。
いやぁ、頑張ったけどみんなに伝わるかな…
伝わってくれ…お願い?

あと、これも題名つけてくれたら嬉しいです。
ちなみに俺は
「つながった線」
かな。
意味わかんない。w
なんか一番最後だけだな、この題名が相応しいのは。
(ダメだこりゃ)

冴名歌が俺って言い出したの、びっくりしたでしょう。
最初は私って言ってて、頭の中も「私」って思い込ませてたんですねー。
冴名歌、頑張ったね。

こんな変な意味わかんない小説最後まで見てくれてありがとうございました。
返信お待ちしております。

低浮上とはいえ、一応小説は書いてます。

R6 10/30(水) 10:29.45


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