僕の現在位置です
今回は少し、病気のことを書いてみる。
昨年来、ひどい耳鳴りやら聴覚障害やらで耳鼻科に通うことの多かった僕。
音高(音の高さ)がわずかに低く聞こえる症状で、ある種の薬の副作用として現れることもあるけど、僕はそれを飲んでない。
特に、電子音とか報知音を聞くと気になる。オーブンレンジとか洗濯機とか。冷蔵庫のドアアラームもそう。
音楽では気にならないのがせめてもの救いだ。
地元の耳鼻科で「ちょっと MRI 撮ってきて」と言われ、検査専門のクリニックへ紹介状を持って行った。
一週間後に結果説明があって「画像は問題ないね、ビタミン剤で様子見かな」とのこと。
でも僕はどうしても納得がいかなくて、「通常、こういう症状にはならないはず。もっと詳しく診てほしい」と伝えた。
医師は「そのね、音高(音の高さ)が低く聞こえるってのがどういう状態なのか、ごめん、ちょっとわかんないだわ」とボヤいた後で、「隣町の総合病院に知り合いの医者がいるから、一応、紹介状書こうか?」と言うのでそうしてもらった。
MR 画像が入った CD-R と診情を受け取って、CD ケースにプリントが貼ってあったので読んでみたら、かかりつけ医と同じ大学の医学部出身の医師らしかった。
すぐに総合病院に電話して予約を取った。
次の週、諸々携えて総合病院へ。
初診だからか1時間近く待った。予約した意味はあるのか。
診察室に呼ばれてS医師と対面、症状を話したところ「音高が低いのね。うんうん」と。
この医師にはどうやら僕の状態が伝わったらしい。
しかし。
S:「MRI 見たんだけど、これね、ホントに見たいところが写ってない。ここ、これね。わかる?」
僕:「わかります。私も家で画像見てきましたが、聴神経と周辺組織が飛んじゃってるんです。撮った意味ないですよね」
S:「そうなんだよ。君は画像も見られるのかい、すごいね」
僕:「ええ、まぁ。そういう業界に居ましたので」
S:「そうか。じゃあ話が早い」
こんなやり取りをしたところで、得るものなど無いのだが。
S医師の見立て(というより憶測)では、聴神経と周辺組織が、それを栄養している動脈と干渉しているのではないか、という。
「唯一、耳の症状改善にカルバマゼピンが効くけど、もれなく目眩の副作用があるし、片頭痛予防で類薬を飲んでるみたいだから上乗せできるかな。頭痛の先生に訊いてみて」と言われて、その日は終わり。
あっけないもんだ。
それから2週間後、頭痛を診てもらってる先生と会ったときにこの話をした。
先:「こう言っちゃナンだけど、耳鼻科領域でできることって限られてるからなぁ。見落とし・見逃し、実は少なくないんですよ。脅かすわけじゃないけどね。ハハハ」
僕:「総合病院に行く前に家で MR 見てたんです。『あれぇ、聴神経が写ってないな』と思って、意味ないじゃないかって。MRA は載ってましたけれども」
先:「そっかそっか。何だか、お金が勿体なかったね。MRA もこの際、無くてもよかったよね。耳の疾患、聴神経を見たい場合は、特殊なシーケンス使うんですよ。検査時間が倍ぐらいかかるんで患者さんには悪いんだけど」
僕:「それは⋯⋯具体的にはどんなシーケンスですか?」
先:「えーっとね、磁場とパルスの使い方が違う。大根の輪切りに喩えるとするでしょ。普通のが5ミリ幅の煮物用だとしたら、こっちは1ミリ幅のお新香用。スライスの枚数が圧倒的に多いんで、ある程度大きい患部であればその断面までしっかり写るわけですよ」
僕:「なるほど⋯⋯。つまり、時間軸方向の分解能を上げているということですか?」
先:「その通り。そういうこと」
先生からは、特殊なシーケンスで全脳を撮ってみて、本当に神経と血管が当たっているのか確かめたほうがいいと提案された。
僕も同じ考えだったから、日を改めて検査を予約した。
検査当日は朝9時から撮影が始まって、3テスラの機械で丸々40分かかった。検査に倍ぐらい時間かかるよって話は本当だったよ。
でも MR の検査は慣れっこだし、普段は機械の中で居眠りしてるし(笑)。
結果は、AICA (*) に軽度の奇形が見つかったほかは正常。
その奇形も何らかの障害をきたすものではなくて、基本的に放っといて良いと。
少なくとも聴神経と血管は触れてないので、仮にひどくなるようならカルバマゼピンを考えましょうということだった。
* AICA=anterior inferior cerebellar artery:前下小脳動脈。ここが梗塞などで詰まると重い難聴になることがある
「はい、これね」と裏返しにして、読影レポートも渡してくれた。限られた患者にしか見せないアレだ。
「今回の読影医の所見には怖そうな単語がチラッと載ってるけど、気にしなくていいよ。長時間の検査、ご苦労さまでした」
A4 用紙1枚にびっしりと書かれたレポート、ざっと目を通しただけでも13項目の所見が。
すごく大雑把に要約すると、「左 AICA の分枝があるが神経偏位はないので異常所見とは言えない」との内容。
たしかに、AICA の枝分かれが一つ多いこと以外、特に問題になる記述は見当たらない。
だから先生も今のところ様子を見ているのだろう。
検査中、特有の音と振動があったんで FLAIR か SWAN かなぁと思ってたんだけど、神経と血管の癒着に注目するんであれば水は暗く、病変は白くして写すよなぁと。
それに「40分も掛かるかな?」との疑問もあったし⋯⋯。んー、MRA を長くしたか?
会計待ちの時、レポートを詳しく読んだら検査オーダー欄に「脳槽撮影までお願いします」とあった。
となると今回使ったシーケンスはおそらく FIESTA あるいは CISS だ。
そうであれば40分の長時間撮影の説明もつく。
今度、月末に先生と会うから、訊いてみようかな。
しかし、耳鼻科でわからなかったことが神経内科でわかるんだ。
ホッとしたと同時に、すごいなぁと思ったし、耳鼻科医への信用度が落ちてしまったのもまた事実。
昔から感じていることだけど、自分の直感に従うことはやっぱり大事だと改めて確認。
♪Assorted Cakes / 中路もとめ
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