夜寝る前、私は心を取り出して、そっと撫でる。抉られたような傷、治りかけたのに塩を塗りこまれてヒリヒリする傷、未だに血を流す傷。一通り眺め、またきっちり鍵を締めて眠りにつく。
時薬がほんの少しずつ、癒してくれる気がするから。
あなたが亡くなってからの習慣になってしまったよ。
人ってみんな、冷たいね。
あなたが大きな背中で、守ってくれてたから、気づかなかったよ、父さん。
入学当初、まだ無邪気だった私は、
あなたが突然亡くなった悲しみを癒したくて、ちょっと仲良くなった子たちに、すぐに心の傷を見せてしまっていた。
でも、大抵帰ってくるのは面倒くさそうな顔。
そのことに気づき、見せるのを止め、誰が見ても「とっても元気で明るい私」になった。
人には頼られ、相談に乗ることも多かった。
その反面、一人になると、勉強など手につかず、ひたすら眠って、次の日をやり過ごすエネルギーを得ていた。
一年後。結果、留年。理由は簡単、テストで点が取れなかったのだ。
もともと根が真面目な私は、授業には全出席していたし、宿題もきっちりやっていたから、周りの子を勉強面で助けることも多かった。
だから、留年を周りに不思議がられた。
そこで、「実は、、、」とまた懲りもせず、傷を見せてしまった。
もうみんなの中で、私は留年生、使えない子扱いなのだろう。
言いたい放題で突き放された。
みんな、本当に例外なく、
「甘えだ」「世の中にはもっと大変な人もいる」と偉そうに言う。
「あなたの友達だから」とか言いながら傷を抉ってくんだ。(友達なら、テスト前に資料くれる約束をワザとバックれたりしないでしょ。)
どうしようもなかったんだ。
カラダのダルさ、趣味にすらやる気が出せなくて、5分と同じことを続けていると悲しくなってきて、頭がおかしくなりそうになった。
一番親しかった(と思っていた)人にそんなことを訴えれば、さらに追い討ちをかけられた。
人に期待するのはやめよう。
利用されるのももう嫌だ。
心なんて、もう見せない。
でも、暗い人にも思われたくない。
負けた気がする。
だから、話しかけられれば口角を上げて、上品に笑って対応するんだ。
いつか、、、私の傷に薬を塗って、「痛かったね」って、抱きしめてくれる人が現れたらいいな。
そして私も、その人に相手にそうしてあげられたら嬉しいな。
まだまだ先のことなのだろうけれど。
胸が痛い。
ななしさん
小瓶、読みました。
私も最近身内を亡くし、似たような状況にあります。
ただでさえ普通に暮らしていくだけでも苦しいはずなのに、元気に振る舞って、しかも相談にまで乗ってあげて……挙げ句に友達にそんなことを言われたら、本当に本当に辛いですね。
やっぱり他人は他人なんだ、もう傷つきたくない、と心を閉ざしてしまいます。
でも、小瓶主さんがこの小瓶を書いてくれたお陰で、それが私だけじゃないんだ、って、少しホッとしました。
本当にありがとう。
これからは小瓶主さんが誰かの道具になることもありませんし、気休めに聞こえるかもですが、きっと分かってくれる人、寄り添ってくれる人は現れると私は思います。
長くなってしまって、すみません。
いつか、小瓶主さんの傷が癒え、満たされる日が来ることを心からお祈りしています。